五月雨をあつめて早し最上川,って凄い!意味や季語についても
奥の細道で有名なのですが、
五月雨をあつめて早し最上川
この句、意味がなかなか分かりにくいですね。
まあ、俳句の意味をイキナリ分かる人のほうが
少ないかとは思いますが、
「五月雨」という季語がまた、どの季節かをまぎらわしくしています。
とはいえ、
俳聖といわれる松尾芭蕉が奥の細道で詠んだ有名な句、
せっかくなので、その良さを少しでも味わってみたいもの。
ということで、この句の意味についてです。
あと、この句を詠んだ状況も、かなりすごいものなので
そのあたりについても述べていきます。
解釈について
五月雨(さみだれ)は、梅雨時の降り続ける雨、
最上川は、山形県にある川、急流として知られています。
梅雨、急流。
これで想像がつくかもしれませんが、
「五月雨をあつめて早し最上川」とは、
梅雨の雨が最上川にあつまって猛烈な勢いで流れている
という意味です。
まあ、こう、さらっと解説してしまうと
「だから何だ?」となるのが俳句の常なんですが、
松尾芭蕉さん、この急流を川下りしているんですよね。
わー、なにやってんだって話じゃないですか。
梅雨の豪雨で増水した川を下るなんて、死にますよ?
なんでこんな無茶なことをしたのか。
ゲリラ豪雨にでもあったのか。
そのあたりは良く分かりませんが、
実際に命がけだったようです。
そんな中、五月雨をあつめて早し最上川とか言ってるなんて、
さすが俳聖。
まあ、病気で死にかかっていても俳句を作るような人ですから
これぐらいは当たり前なのかもしれません。
タイタニックが沈没するときに最後まで演奏をつづけた楽団といい、
一芸を突き抜けちゃう人というのは、すごいものですね。
あと、
「なんで五月なのに梅雨?」
と思われた方は、こちらをご覧ください。
五月雨の本当の意味
これを知らないとよく分からないことになるので
先に「五月雨」の意味を知っておくといいです。
季節はいつ?
ここまで読んだ方にはもう分かると思いますが。
五月雨をあつめて早し最上川
この句の季語は「五月雨」です。
まあ、思いっきり「五月」と書いているので
すぐに分かりますか。
問題は「5月だから、まだ春!」
と、春の季語と間違われやすいことです。
先ほど述べたとおり五月雨(さみだれ)は梅雨の雨の意味で、
ここでの月は旧暦でのこと、今でいう6月にあたります。
なので、これは夏の季語ということになるんです。
ここを間違えると
何いってんだか意味の分からない句になり、
「五月のカラッとした天気でもそこかしこの雨を集めていくと
最上川のような、はやい流れになるんだな、
みんなの力を合わせてがんばろう!」
みたいな分けのわからない解釈が
出来上がったりしますので注意が必要です。
スポンサーリンク
涼し?早し?
この句はもともと
五月雨をあつめて涼し最上川
というものでした。
これは最初、松尾芭蕉が
最上川の船町、大石田での句会で詠んだもので、
「暑い7月に、梅雨を集めたような最上川からくる風が涼しいなあ」
というような意味です。
たいへん風流で優雅な句だったのですが・・・。
急流を川下りする
↓
ギャー
↓
「五月雨をあつめて早し最上川・・・」
と変更されたようです。
いちど詠んだ句を変えるって、そんなのアリ?
と思われるかもしれませんが、
こういうのはよくあることなんですね。
俳句って、なんとなく仙人みたいな人が弟子に囲まれて
「・・・ここで一句」
とその辺にさらさらと書きつけ
「すごい!」
「なんて見事な句!!」
「さすが先生」
みたいな即興で出来るイメージがありますが、
実際にはかなり推敲して変更することも多かったようです。
速し?早し?
川の流れがはやいは
「早い」じゃなくて「速い」では?
・時刻が「早い」
・スピードが「速い」
こうですよね。
五月雨をあつめて早し最上川
これでは松尾芭蕉が川下りの集合時間の早さに
ぶうぶう文句を言っているみたいじゃないですか。
でもこれは松尾芭蕉が漢字に弱かったとかではなくて、
実は「早い」もスピードをあらわすときに使えるのです。
そういえばそうですね、「素早い」「早馬」と書きますし。
こういうややこしいのはちょっと面倒ですねー、
小学生の子供とかに急に聞かれそう。
「学校で『速い』と教わったよ」とか。
おわりに
私がこの句を目にして真っ先に思い浮かんだのが
遊園地の急流すべりです。
なんだか笑われそうですが、
急流を下るときの水しぶきなんかが目に浮かぶんですね、
「服ぬれたよー」みたいな感じで。
「梅雨で増水した川を下る」なんて
今は現実問題として、まず無理でしょうけれども
それでも印象深い記憶、見た景色を
ありありと思い出させる句だと思います。
関連記事はこちらです。
五月雨とはどんな意味かを知って「えー」となりました
昔の言葉はなかなかむつかしいですね。
今でも使われている「五月雨式」については、こちらで述べておりますので、
よかったら見てみてくださいね。
五月雨式とは、かっこいいようで、そうでもない
これも、独特の表現で面白いです。
松尾芭蕉の有名な句についてです。
「古池や蛙飛び込む水の音」についてはこちら
有名な句ですが
こうやって考えると奥深いです。
スポンサーリンク
タグ:文学