李下に冠を正さず、は便利な言葉。漢文でもかっこいい
普通に生活していても
災難は突然やってくるもの。
なかでも理不尽に感じるものが
なにもやっていないのに
悪いことを疑われることで
例えば万引きの冤罪なんかがそうですね。
もちろん本当に
こういったことをするのは論外ですが
誤解を受けたという話を聞くたびに
なんとも気の毒な気分になります。
それから
こういった出来事が
自分に降りかかったらどうしよう!
となって、
最後に
李下に冠を正さず
という言葉を思い出します。
せめて疑いをかけられないように
気を付けようというものです。
この言葉の意味
李下に冠を正さずとは
疑いを持たれるような行動は慎むべき
という意味。
李とはスモモのことで、
スモモの木の下で冠のずれを直していると
実を盗んでいるように見えるから
やってはいけない、ということですね。
もちろん冒頭で述べたような冤罪にあった人が
紛らわしいことをしたから
悪いというつもりはないです。
ただ、そのようなとばっちりを受けないために
行動には注意したほうがいい、ということですね。
例えば買い物に行くとき。
日用品はスーパーでほとんど買えますが
最近はドラッグストアの品揃えが妙にいいですよね。
で、お菓子とかが
ドラッグストアのほうが微妙に安かったりする。
そこで、お菓子を先に買って、それを持って
スーパーに野菜を買いに行ったりすると
思いっきり怪しいじゃないですか。
カバンから半分袋が見えていたりしたら
店員さんに目をつけられそう。
まあ、実際には現行犯じゃないと
捕まらないとは思いますし
ドラッグストアのレシートがあれば
まず大丈夫だとは思うのですが、
それよりも
最初にスーパーで野菜を買って
それからドラッグストアに行けばいい。
野菜はドラッグストアにはないから
疑われようがない。
これが
李下で冠を正さず、ということですね、
ちょっとたとえが卑近すぎますか。
でも毎日の買い物ですらうっかりすると
紛らわしい行為になりかねないということですね。
電車の切符をしょっちゅうなくしたり
脱いだ上着を抱えて持ちながら
服屋さんに入るのも
疑われる行為かもしれません。
こういった無意識や
うっかりミスでやってしまうことも
李下で冠を正さずという言葉の意味を思い出して
気を付けたいところです。
スポンサーリンク
どういった由来があるのか
この言葉は漢文の
君子防未然、不處嫌疑間。
瓜田不納履、李下不正冠。
から来ています。
読めませんね。
私は漢文はとても苦手でした。
君子は未然に防ぎ、嫌疑の間に處らず。
瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず。
くんしはみぜんにふせぎ、けんぎのかんにおらず。
かでんにくつをいれず、りかにかんむりをたださず。
こう読みます。
なんかかっこいい。
全部覚えるのは大変ですが
「君子」という言葉が入っていますし
一度は言ってみたいところです。
この言葉の使いどころ
私はどちらかといと
自分への戒めとしてこの言葉を覚えているのですが
人に対して使うにも便利な言葉です。
なぜ便利か。
それは、
「人の目なんか気にしているのは
ヒクツなことだ!」
という、考えようによっては
説得力があることを言いながら
トラブルを起こしている人に
忠告を与えるときに便利な言葉だからです。
たとえば、
仕事はするけどしゃべってばかりで
上司に怒られている同僚がいたとします。
そして、そのことを
日々あなたに愚痴ってくる。
「俺はちゃんと仕事しているのに
しゃべっているからといつも怒ってくる
あのクソ上司め」
めんどくさいですね。
しゃべって怒られてるんだから
上司のいる時ぐらい、静かにすればいいのに。
しかし、たいていの場合、
そういっても通じません。
「仕事さえちゃんとやればいい、
それが俺の考え。
お前みたいにコソコソと
上司の顔色をうかがうなんてまっぴらだ」
私がどうしてようと関係ないだろ!
それに上司の顔色をうかがってなんかいないよ!
こういうとき、
中途半端に反論しても泥沼化します。
今こそ中国の故事の出番です。
「李下に冠を正さず、という。
紛らわしい態度はとらないことだ」
ほら。なんか説得力が出てきますね。
それでも納得してくれなければ
先ほどの漢文を全部いうのも手です。
「君子は未然に防ぎ、嫌疑の間に處らず。
瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」
まあ、ここまでやれば
少々嫌味かもしれませんが
相手をけむに巻いて
毒気を抜くことができるかもしれません。
ところでスモモって何?
ここからは余談ですが
李(スモモ)とは、中国原産の実で
春に白い花を咲かせます。
酸っぱいことから日本語では
酸桃とも書き、
「スモモも桃も桃のうち 桃もスモモも桃のうち」
の早口言葉で有名ですが
桃とは違う種類の果実で、
プルーンとかプラムのことです。
こんな感じに実が生ります。
0:18あたりから実が出てきます。
ここで冠をなおしてはいけないのです。
なお、瓜田に履を納れずも同じような意味で
李下に冠を正さずと対句(並べて使うこと)
として使用されます。
スポンサーリンク
タグ:言葉